第5回 手元供養の形を提案

INTERVIEW

2020.06.10

墓じまい

都市部を中心に、お墓を持たない人が増えている。
2013年度の「衛生行政報告例」(厚生労働省)によると、維持管理が難しくなったお墓を処分するいわゆる「墓じまい」の件数は、全国で約8.8万件と、前年度より約1割増えた。
お墓を不要と考えている人は2割以上にのぼる(2010年第一生命研究所)。

高齢の親を持つ子供の多くは、葬儀や供養面に不安を感じている。先祖代々のお墓は遠隔地にあり、墓参りに行く時間が取れない。経済的な事情でお墓の購入が難しい。少子化などでお墓の継ぎ手がいなくなる。
遺された家族の墓守の負担を少しでも減らしたいと、親自らが墓じまいを検討することもある。

2万円からはじめられる手元供養

墓じまいをしたら、どうやって先祖を供養するのか。1つの回答が手元で供養をする「手元供養」だ。
手元供養に関わる商品を提案しているのが、株式会社インブルームス(静岡県静岡市、代表取締役菊池直人)。
遺骨を中に入れて身に付ける遺骨ペンダント「Ash in Jewelry」が受け入れられ、2006年の販売開始以来、累計で約4万個が売れた。
アクセサリー状のデザイン。大振り過ぎないサイズ感で、自分で遺骨を納められる付属キットが同封されている。値段も約2万円からと手ごろだ。
遺骨ペンダントを常に身に付けて、故人と一緒にいることを実感できる。

遺骨ペンダント

墓不足の解消がきっかけ

菊池代表はもともと土木技術畑で、墓苑の造成をしていた。墓不足は慢性的で、募集倍率は数十倍から数百倍にもなる。
お墓に入れずに困っている人のためにできることはないか。
遺骨からダイヤモンドを作成する海外の会社をニュースで知り、連絡を取った。日本での独占販売権を認めてもらい、会社を始めた。
しかし遺骨ダイヤモンドの作成は高額である上に、遺骨を海外に送って製造する点に不安を覚える顧客もいる。
もっと低コストでわかりやすい商品をということで、翌年に海外から遺骨ペンダントを輸入し販売し始めた。

一緒に生き続けたいという思い

もともと外国には故人をしのぶ意味で、「モーニング・ジュエリー」を身に付ける習慣がある。マリー・アントワネットの遺髪を納めたリングは知られているが、最近では日本でも、故中村勘三郎の遺骨をダイヤモンドにして身に付けている夫人の話が報じられた。
2001年9月11日に発生したアメリカ同時多発テロ事件の犠牲者の遺族には、遺骨ペンダントを身に付ける者が多かったという。

「夭逝した子供や、突然に亡くなった故人と、今後も一緒に生き続けたいという理由で依頼する方が多い」(菊池代表)
最愛の家族の死を受け入れられず、何年もうつ状態になってしまう遺族もいる。
県外からの顧客も多く訪れるが、夫を亡くして以来、初めての外出という妻も多い。
「わざわざ遠方まで出向くこと自体も供養の1つ。最終的には時間が解決するにしても、遺骨ペンダントを身に付けることで外出できるようになった方もいる」(同)

自社製造で海外からも引き合い

当初は遺骨ペンダントを輸入して売っていたが、すぐに自社製品を開発した。
輸入品では、遺骨を閉じ込めるネジの精度など細かい技術に問題があった。そこで世界的に見ても技術の高い日本の時計職人に依頼し、密閉性が高く、金属アレルギーを起こしにくい純チタンや医療用にも使用されているステンレスの素材のみで作る。遺骨を閉じ込めるネジにはゴムパッキンと緩み止めの液体を塗ることで、生活防水機能も実現した。精度の高い技術だからこそ実現化された機能である。
「チタンの加工が難しく、技術的にもまねできない物と自負している」(同)
海外からの引合いも、徐々に増えている。

新しい供養方法として

遺骨ペンダントだけではない。菊池代表は新しい供養方法として、商品開発に挑み続けている。
デザインを施したガラス製の骨壺や、家具に収納しやすいA4サイズの仏壇のほか、最近では、アートガラスでできた墓石をミニチュアサイズにしたものも販売している。
インターネット墓地まで登場するご時世。供養の形式はますます多様化している。
「マンション生活や都会生活になじむ供養もある。自分の遺骨でダイヤモンドを作るように遺言を書く方もいる」(同)
納骨やお墓の問題は法律で解決できない部分もあり、相続をめぐる紛争を長期化させる一因になっている側面もある。遺骨ペンダントをはじめとする新しい供養方法は、そうした紛争の長期化を防ぐという意味もあるだろう。

聞き手

東京弁護士法律事務所代表

弁護士・税理士 長谷川 裕雅

株式会社インブルームス
代表取締役 菊地 直人
http://www.inblooms.co.jp/

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