第4回 ペットの10年後のために「ペット信託」を提案

INTERVIEW

2020.06.10

高齢者が抱えるペット問題

日本における犬や猫の推定飼育数は約2061万5000頭(平成25年度一般社団法人ペットフード協会/全国犬猫飼育実態調査)。ペットの平均寿命が延びるにつれ、飼育件数も増加傾向にある。
ペットも人間も高齢化が進む。自分が死んだ後に、ペットをどうするかを心配する人は多い。相続対策の1つとしてペット飼育問題の解決に取り組むのは、行政書士かおる法務事務所(福岡県福岡市、代表服部薫行政書士)。

高齢化社会のペット問題

ペット信託Rとは

同所が提案する日本初の「ペット信託R」は、飼い主の死後のペットの飼育者と飼育費を、生前に決められるサービスである。

あらかじめ新飼い主と飼育費となる財産を決めておく。
現飼い主が飼育費を管理する者と信託契約を結び、事前に信託専用口座に財産を移す。現飼い主の死亡をはじめ、入院や事故といった信託開始の条件を定めておく。現飼い主に万が一のことがあった場合は、信託が開始。ペットは新飼い主に引き取られ、信託専用口座より毎月一定額の飼育費が支払われる。

通常、ペットの飼育を相続人に頼む際、遺言書の作成時に、飼育を条件に財産を譲る「負担付遺贈」制度を利用する。しかし相続人が複数の場合、遺言書に残すだけでは、相続争いに巻き込まれて確実にペットのために遺産が使われないこともある。
信託することで、財産は「現飼い主個人の財産」から、「ペットのための信託財産」となる。
ペットの飼育費と相続財産とを確実に分けておくことができるため、相続トラブルを回避できるという。相続人以外に飼育を頼むことも可能だ。

支払われた飼育費が適切に使用されていることを監督するフォロー制度も整えている。同事務所が信託監督人となり、定期的に飼育費の使用状況やペットの飼育状況を確認。適正に飼育されていない場合、飼育費の支払いの中止やペットの保護をすることもある。

ペット信託のスキーム

殺処分を無くしたい一心で行政書士を目指す

服部代表は大学1年時に、飼い主を失ったペットが保健所に連れて行かれる殺処分について知り、動物看護士の道に進む。殺処分をなくしたいとの一心から、働きながら法律の勉強を5年間続けて行政書士の資格を取得。現在はまだ専門家が少ないが、ペット信託Rの第一人者として全国から相談が絶えない。

東京都家庭動物愛護協会会長の須田沖夫氏によると、高齢者がペットと生活することで、老け込みや認知症の進行を遅らせる効果があるというデータもあるという。近年、高齢者のペット飼育を支援するため、ペットと共に入居できる介護施設や高齢者向け住宅が増えている。年齢に拘らず、安心してペットを飼える環境が整いつつある。

依頼者の相談を受ける服部氏

相続問題としてのペット信託R

高齢化が進む中、ペット信託Rへの関心は高まっているが、相談者の中には、飼育後継者を探せずに、ペット信託Rを断念するケースも多いという。新飼い主の確保のために、全国の提携施設の紹介もしている。

「ペットは家族の一員と考える高齢者にとって、ペット信託Rは相続問題の一部である。今後は、全国提携施設の増加も検討している。万が一の備えを提案することで、ペットに安らぎを求める高齢者の相続に関する不安解消のお手伝いをしたい。」(服部氏)

簡単ではない、後継者選び

行政書士かおる法務事務所

代表 服部 薫

聞き手
東京弁護士法律事務所代表
弁護士・税理士 長谷川 裕雅

遺影写真・肖像写真 素顔館
http://sugaokan.com/

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