第2回 空き家対策に「バケーションレンタル」を提案
INTERVIEW
2020.06.10貸別荘が空き家対策にも
相続発生後に、住み慣れた不動産を手放す決断を下すのは難しい。所有者の売却希望金額と実際の売買価格に大きな差も生じることも多い。売り手が見つからない物件は家主を失い、やがて空き家になる。増加傾向の空き家問題に対する対策として2014年末に、「空家等対策の推進に関する特別措置法案」が成立した。自治体も「空き家バンク」などの活動に取り組む。
空き家対策事業としても効果がある「バケーションレンタル」を提案しているのは、株式会社STAYCATION(東京都渋谷区、代表取締役吉村真代)。
家主の思い出が詰まった空き家を、貸し別荘として受け継ぐ。短期間から気軽に利用できるのが特徴だ。
貸し別荘サイト「Nowhere resort」に掲載する葉山・佐島・秋谷の3カ所4施設では、湘南の山々を巡るトレッキングツアーや三崎港でのまぐろ見学ツアーなど、現地でしか味わえない「衣食住」を体感できる。
清掃や修理などの管理を、全て自社で行う上記4施設のほかに、オーナーから空き家を借り受けて転貸する施設も、江の島や伊豆で運営する。
”もったいない”から生まれた事業
別荘には莫大な維持費がかかる上、年に数回しか利用されないことがほとんど。「もったいないという発想から生まれた」(吉村代表)
二人の子供の育児経験もきっかけになった。旅行に行きたくても、新生児同伴はお断りの旅館もホテルが多い。貸別荘ならば安心して子供を連れていける。
高校時代はイギリスで、早稲田大学建築学科を卒業後は留学先のオランダで、計約5年間を海外で過ごした吉村氏。滞在中は、一軒家やフラットを貸し切って余暇を過ごすこともあった。欧米では一般的な空き家活用に着想を得て、2008年に開始した。
結婚式も展覧会も研修も
施設の利用方法も多様化している。ハウスウエディングやアーティストの展覧会会場のほか、企業研修の会場としても需要がある。リゾート需要が落ち込む冬でも、利用料を抑えて稼働率を高める。
イベントの開催には施設近隣の理解が欠かせない。地域に溶け込む工夫もしている。
地元住民の協力を得て、地産食材巡りやネイチャーウォークなどその土地ならではのアクティビティを施設利用者に用意。建物管理や利用前後のハウスクリーニングには地元の主婦などに協力してもらい、地域の雇用促進にも役立っている。新年会などのイベントでは、施設に地域住民を招待して交流を深める。
都市部で”町に泊まる”
リゾート地以外にも目を向けている。高齢化や家族構成の変化に伴い、都市部でも空き家は急増中だ。深刻化すれば地域の治安にも影響しかねない。
鍵となるのは外国人観光客。
「彼らにとって、日本家屋に宿泊して街に泊まること自体が、旅行目的になりうる。都市部の空き家問題解消のお手伝いにつながるかもしれない」(吉村代表)
思い出を失わずに残す
思い出が詰まった家を売却したくはない。
普段は別荘として貸し出しつつ、正月などには親戚一同で集まる場として所有し続けるオーナーもいる。家族の歴史や思い出を失うことなく残すことができるという理由で、相談に訪れる人も多い。
聞き手
東京弁護士法律事務所代表
弁護士・税理士 長谷川 裕雅
株式会社STAYCATION
代表取締役 吉村 真代
http://www.staycation.jp/
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