第9回 「人生の最期を飾る衣装」を提案

INTERVIEW

2020.06.11

晴れの衣装

「あなたの物語を聞かせてください」 その人がどんな人生を歩んできたのか、じっくりと話を伺う。 聞いた話をもとに、その人の人生を形にしたドレスを製作する。 製作期間は最短で1、2週間。 亡くなる直前に注文を受けることもあれば、元気な高齢者が将来のために発注することも。 思いでのハワイ旅行。真珠の婚約指輪。庭でみた青天の空。 コットンパールやブリリアの花を模した胸の飾り、青いサイドパネルなどで、楽しかった思い出がよみがえる。 七五三や成人式、結婚式と同様に葬儀をとらえ、人生の最終章を飾る晴れの衣装「エピローグドレス」を提案する「有限会社ワイツープランニング」(横浜市中区、杉下由美代表)。2013年のオーダーサロン開設以降、遺体に着せるエピローグドレスの普及に取り組む。遺体とともに火葬され、最後は燃やされるが、ドレスを製作して遺体に着せる過程こそが重要なのだという。

イメージを落とし込む

誰しも目にしたことがあるキャンペーン衣装やCM衣装の数々。杉下代表は大手企業のコスチュームデザインを数多く手がけてきた。 味や対象となる顧客層など、商品の企画段階からイメージを聞き取る。抽象的な言葉から世界観をつくりあげて、実際の衣装デザインに具体化する。 30年来の経験が生きている。

自分らしい最期を

杉下代表がエピローグ衣装を手がけるきっかけとなったのは、友人の夫の葬儀への参列だった。棺桶の中に横たわる遺体がまとっていたのは縦縞のユニフォーム。熱烈な阪神ファンの最後は、洒落がきいていた。湿っぽくない、よい葬儀だった。 葬儀社が用意した仏衣を着用するのではつまらない。 人生の最期に着るその人らしい衣装をつくろうと思った瞬間だ。

最高の品質を

杉下代表は実母にも一着あつらえている。 「風と共に去りぬ」などのハリウッド映画や、「若草物語」などの舞台を好み、高校時代は演劇部まで立ち上げた母のために、最高のドレスを用意した。 「ハリウッドドレス」と名付けられたドレスは、フランス製の最高級レースや厚手のシルクをふんだんに使った。 生地や素材、縫製などは最高の品質にこだわる。 横たわった状態で一番美しく見えるよう、素材や生地の重ね方に工夫を施し、立体感を出す。 機能性も重視し、袖口や背中に大きなジッパーを付け、遺体に着せやすくした。 「家族全員で遺体に衣装を着せることで、最愛の人の死を受け入れることができる。グリーフケアにもなる。」(杉下代表)

市場の創出

「自分1人では服を着ることができない高齢者にも、おしゃれな衣装を着てもらいたい」(同) エピローグドレス製作のノウハウは、杉下代表が手掛ける他の商品にも活きる。高齢者向け洋服ブランド「楽袖」ではアームホールを広めにとり、縫い目を減らして床ずれを防ぐ。ボタンは着せやすいように大きくし、かけ違いを防ぐためにスナップボタンを1つだけ混ぜた。 後発ブランドの楽袖は軌道に乗りつつある一方で、エピローグドレスの普及にはまだ多くの課題があるようだ 「まずはエピローグドレスを着てもらう習慣を確立してもらうことが大切」(杉下代表) 葬儀業者などとの連携を図るなどの奮闘が続く。

ナレジックス株式会社

有限会社ワイツープランニング

代表取締役社長 杉下由美

弁護士・税理士 長谷川 裕雅

有限会社ワイツープランニング 光の庭

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