第6回 環境保護を考えた「地球にやさしい葬儀」を提案

INTERVIEW

2020.06.11

エコなコフィン(棺)

環境保護の考えを取り入れた日用品を目にすることは多い。エコなライフスタイルが浸透するなか、葬儀においても環境に優しいアイテムが登場している。

一般に葬儀において排出される二酸化炭素は約300キログラム。成人1人が1年間に呼吸して排出する量にほぼ匹敵する。遺体の保存はドライアイスを大量に消費するし、霊柩車からは排気ガスが出る。遺体を納める棺は、今では熱帯林のラワン材が多く使用され、海外の森林破壊を進めている。

葬儀は今まで、決して環境に優しくはなかった。

そんななか“地球にやさしい葬儀”が注目されている。花や樹木を基碑にし、遺骨を土葬することで、基礎工事や墓石設置工事による環境への負担を抑える樹木葬や、お墓を建てない海洋散骨もエコな葬儀の1つ。

しかし葬儀の形式を変えるこれらの方法も、そもそも最初に火葬をすることが前提。火葬の際に排出される大量の二酸化炭素を減らすことができれば、環境保護にとってより抜本的な解決策になる。

産業用梱包材関連会社のウィルライフ株式会社(東京都港区西麻布2‐26‐5、増田進弘代表)が2006年に開発を始めた「エコフィン」は、1棺につき1本のモンゴルへの植林がセットになった、エコな「コフィン(棺)」だ。1回の火葬で排出される温暖化ガスの二酸化炭素は200キログラム前後だが、エコフィンは棺から排出する二酸化炭素の量を削減し、燃焼時の有害ガスを約3分の1にまで削減するという。木材使用量を従来の約半分にし、燃焼エネルギーもおさえる。しかも葬儀で排出する二酸化炭素を、植林した木が吸収するという(カーボンオフセット)システムを採用している。

循環サイクルを目指す、環境への思い

洗練されていく段ボール棺

同社は当初、針葉樹からのヴァージンパルプ(再生紙ではない二次利用ではないパルプ)製の棺をアメリカから輸入していた。これが受け入れられなかった理由は「段ボール箱でミカン箱を連想するせいからか、安っぽいイメージがついたから」(増田代表)

試行錯誤が続いた。

親会社の本業である段ボール加工技術を生かし、特殊強化3層段ボールを主材に、木材の利用を最小限に抑えた紙製の棺「エコフィン[ノア]」が完成したのが2006年。

車の部品を梱包する用途でも使われる特殊強化段ボールは、強度において、通常の棺に使用されるベニヤ板をはるかに凌駕する。実家が家具屋だったという増田代表は、幼少時代の食事療法や自然療法の体験で昔からエコに関心があり、森を守りたいと、間伐材も取り入れた。

3年後に作成した2代目「エコフィン[Will]」は、国産ヒノキの間伐材と特殊強化2層段ボールを使ったハイブリッド製エコ棺。デザイン性も評価され「第5回ロハスデザイン大賞モノ部門」を受賞した。

第5回ロハスデザイン大賞モノ部門を受賞した「エコフィンWill」

死をみつめるきっかけづくり

エコだけではなく、家族のありかたにも配慮をする。

「核家族化が進み、病院で死を迎える時代。死を目の前で見つめる経験が消えた」と語る増田代表。「葬式はパッケージ販売をする業者に丸投げしてしまい、ベルトコンベア式にあっという間に終わる。家族の突然の死を受け止める間もなく、遺族は喪失感にさいなまれる」

2013年から販売している「エコフィンiS」は、自分らしい葬送の演出も可能にする。段ボールの特性を生かし、棺をキャンバスに見立て絵を描き、お気に入りの布で棺カバーをつくる。棺カバー作りのワークショップを開催し、死と向き合う時間の大切さを提唱している。家族でいっしょに時間と手間をかけて準備をすることで、死と向き合い、受け入れる。故人への想いを分かち合えるのだという。

家族で考える棺のデザイン

環境ビジネスとしてのエコフィン

葬儀も日常と同じ価値観(エコもその一つ)で選択したいと考える人が増えている。2007年からは、モンゴルで展開する植林プロジェクト「エコフィン生命の森」において、エコフィン製作1棺につきアカマツ1本を植林し始めた。ほかにも、ミュージシャンの坂本龍一氏が代表を務める森林保全団体「more trees」に売り上げの一部を寄付するなど、葬送で排出される二酸化炭素をオフセットする仕組みが出来ている。

従来のセット型葬儀をアンバンドリングし、個々の価値観を投影できるエコフィンは、葬送ビジネスにおける新しい試みだ。

保守的ともいわれる葬送業界に新風を巻き起こす存在になれるか。

地球にやさしい、環境づくり

ウィルライフ株式会社

代表取締役 増田 進弘

聞き手

弁護士・税理士 長谷川 裕雅

ウィルライフ株式会社
http://www.willife.com/

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