第7回 葬儀費用を抑えた「小さなお葬式」を提案

INTERVIEW

2020.06.11

簡素化する葬儀

通夜や告別式とのセットで考えられていた葬儀を簡略化し、「直葬」(火葬のみ)や「家族葬」(近親者中心)のみとすることで、葬儀費用を抑えるケースが増えている。 「追加料金不要」を売りとして、株式会社ユニクエスト・オンライン(大阪府大阪市北区中之島2-2-2、田中智也代表取締役)が手掛ける葬儀サービス「小さなお葬式」は、業界平均約122万円(平成26年日本消費者協会発表)に比べ、最大で約85%も葬儀費用を抑えた割安プランを打ち出す。

異業種からの参入

同社は葬儀社ではない。IT企業が2006年に、新規事業として葬儀業界に参入した。 学生起業したシステム会社ではもともとメガバンクなどからシステムなどを受注するなど、対法人の仕事をしていた田中代表だが、エンドユーザーの質問に答える不動産サイトの製作を受託。顧客の顔が見えるエンドユーザー向けの業界を手掛けるきっかけになった。 その後システム会社を退社した田中代表が、新しくユニクエスト・オンラインを立ち上げ、ネットで業界慣習を改革したいと目をつけたのが葬儀業界。 まずは、葬儀社の検索・比較サイト「葬儀本.com」を開設した。 「ウェブサイトを開設している葬儀社が少なく、インターネットで情報を収集できない。業者の強みや葬儀費用・サービス内容の差など、消費者が知りたい情報がなかった」(同田中代表)

ビジネスモデルの変遷

葬儀社と利用者をつなぐサービスではあったが、最初からうまくいったわけではない。電話帳で調べたリストを元に、全国の業者を訪ね歩いて営業をした。ところが、同じ掲載料でも成果にはばらつきが生じてしまう。 そこで掲載料を無料とし、葬儀費用の一定割合を成果報酬で徴収する成果課金モデルに切り替えた。しかし葬儀は急に依頼することが普通で、掲載媒体を利用者に正確に確認してもらいにくい。利用者と葬儀社とが直接連絡をとって契約することも相次ぎ、成果の正確な把握が難しかった。 結果、直接に葬儀を出す直販モデルに行きつく。加盟葬儀社の協力を得て、自社で葬儀をプロデュースすることにした。「小さなお葬式」を売り出し、各加盟葬儀社に同じガイドラインに沿って追加料金不要でサービスを提供してもらう。これが当たった。

今後の展望

「小さなお葬式」を2009年10月からスタートし、今では年間15,000件の受注件数に成長。2020年までに、年間30,000件の受注数を目標とし、業界トップシェアを目指す。突発的に業務が発生する葬儀業界においては、繁忙期と閑散期が不可避的に発生してしまう。顧客を早めに確保することで繁閑リスクをコントロールする早割制度が、新たな試みとして浸透しつつある。500円で販売する早割チケットは、購入時から使用までの期間に応じて割引率が高まる。3年間の有効期限があるものの、結果的に早めの準備をした顧客ほど、格安でサービスを受けられ、初年度で5,000枚売り上げた。 異業種出身の代表が提案する「小さなお葬式」は、次なる進化を模索している。

株式会社ユニクエスト・オンライン

代表取締役 田中智也

聞き手

弁護士・税理士 長谷川 裕雅

株式会社ユニクエスト・オンライン

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